最強の安全基地

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「うわ、またこんな失敗してる…」
「あーあ、ダメじゃん、こんなんじゃ。もっとこうしなくちゃ」
なんて、日々脳内でつぶやいてはいないだろうか。

完璧主義とはいかなくても、自分にダメ出しすることって、普通にみんなあるんじゃないだろうか。
もっと上手くなりたい。
もっときれいになりたい。
もっと仕事が出来るようになりたい。
……などなど。
もちろん、向上心は素晴らしい。
でも今の自分をそんなに否定する必要があるのかどうか。
それを少し考えてみたいのです。

私は自分でいうのものなんだ、というくらいの完璧主義だと思う。
そして、そうあることの苦しさを、今、苦いほどに感じ入っている。
もともと結構ザツな性格だし、不器用で、だからこそ、完璧にやりとげたい、完成させたい、という思いが強いのかもしれない。
器用さやていねいさに対するコンプレックスの裏返しなんだろう。
さらに、どこまでやれば完成なのかが分からない。
時には、やりすぎでしょ、というぐらいやっても、完成した気がしない。
そうやって自分を追い詰めることもあったと思う。

そういう人は、たいてい他人にも厳しくなりやすい。
別に面と向かって批判することは、さすがに大人であるからしてしないけれど、ひそかに、人に対しても、
「あの人もっとこうすればいいのに」とか
「こんなこともちゃんとできないのに、よく堂々としてるな」
などと思っていたりしたのです。
あー、客観的に考えるとめちゃくちゃいやなやつ。

道行く人の姿勢や歩き方が気になる。
ひどいO脚だなとか、ハイヒール履いてるのにみっともない歩き方だとか、猫背がひどいとか!! 
本当に余計なお世話、超いやなやつである。
自分のことも、人のことも、出来てないところばかりが目に付く。悲しいことに。
男性に対しても、もちろん同じく批判の目で見てしまう、そういうクセが付いてしまう。そうなると、もうモテるモテないの話ではなく、本当にいやなやつでしかなく、うっとおしがられる運命だ。

ある時ふと、目に留まった言葉があった。
その女性は自他ともに認める「男好き」らしいのだけど、
「男の人って、もう男性であるっていうだけで素敵です。自分にはないものを持っているから! 身体もそうだし、体力も、思考回路も!!」
そうか。
確かにそうですね。
自分にないものを持っている人というのは、とてもうらやましいし、素敵に見える。
そうかそうか。
そういうつもりで、道行く人を眺めて見る。

そうしたら、なんと、本当にそんな風に見えてきたのです。
今までなら、姿勢悪いなこの人とか、顔色悪すぎとか、そんな風に見ていたであろう男性が、ああ、私にないものを持っている人だな、と思うと素晴らしく見える。
なんという単純さ。

そうやって見ていると、女性も同時に素敵に見えてくる。
一生懸命メイクやおしゃれに気を使っていることも、同性の私には見えてくるし、柔らかい身体や髪は女性の素晴らしいところ。

なんと、道行く人すべてが素敵に見えてくるということになった。
でもこれは、まだ一生懸命意識しないと出来ない見方で、無意識にしていると、ダメ出し方向へ行ってしまうのだ。

そもそも、出来てないことがあったって、別に構わないのだ、本当は。
すべてが完璧な人なんていないし、動物が出来ない自分を憂いているところなんて見たこともない。
自分を責める猫とか聞いたことないし。
出来ない部分は、人のやさしさを受け入れる器だと聞いたこともある。
出来ても、出来なくても、どっちだっていいのだろう。

出来ることなら、自分は自分の最強の味方でいたい。
どんなダメな自分も、出来ない自分も、一生懸命頑張っている、けなげでかわいいやつだと受け入れ、甘やかしてあげられたら、どんなに安らぐだろう。
たまには大人になったって、よしよし、と頭をなでられたらうれしいのじゃないだろうか。
それを自分にしてあげたって、別にわるくないだろう。
なぜ自分を責めるのですか。間違っていたら他人が指摘してくれるのに、という感じのことを、アインシュタインも言っていたらしい。

自分を守り、自分のやりたいことを尊重する。
まるで猫だ。
だから猫って魅力的なのかもしれない。

小さいころは、お母さんが安全基地だった。
お母さんがいれば、安心して遊ぶことが出来る。
お母さんが見ていてくれれば、冒険できる。
何かあっても、すぐ飛んできてくれることを知っているから。
いつも一番に、自分のことを考えてくれているのを知っているから。
寝ぐせでぼさぼさでも、駄々をこねて泣いても、きっと嫌いにならないでいてくれる、と信じているから。

でも大人になって私たちは、
自分が自分の安全基地になる。
自分は自分の最強の味方になる。
そうすれば、もっと楽に生きられるだろう。
自分にダメ出しするんじゃなくて、よしよししてあげよう。